3月17日に千葉県の神崎町で開催された「発酵の里こうざき酒蔵まつり2019」に今年も行ってきました。神崎町の老舗酒蔵「鍋店(なべだな)」と「寺田本家」を中心に沿道を歩行者天国にして、地域物産や発酵食品をはじめとした露店が約200店立ち並びます。当日は酒蔵見学や無料試飲のほか、限定酒の販売もされていました。
酒蔵まつりは、醸造業が盛んだったかつての神崎町の賑わいを取り戻そうと、当時それぞれの蔵で独自におこなっていた催しを統合し、町とも連携して2009年から始まりました。毎年3月ごろに開催されていて、人口6,000人ほどの千葉県一小さな町に、今年はなんと約55,000人が来場したそうです。
寺田本家では11種類のお酒が試飲ができて、こんなラインナップ。
- 五人娘 大吟醸酒
- 五人娘 吟醸酒
- 五人娘 純米酒
- 寺田本家木桶仕込 純米火入れ原酒
- 懐古酒 五人娘長期熟成古酒
- お蔵フェスタ限定(新酒・うすにごり)
- 香取 純米90
- なんじゃもんじゃ 純米生原酒
- 花啓く 熟成甘口酒
- 醍醐の泡 菩提酛仕込み
- むすひ 発芽玄米酒
ほかにも当日限定のどぶろくが飲めましたよ。あー幸せ。
お蔵見学ツアー
いよいよ酒蔵見学へ。蔵人さんが約30分ほど丁寧に案内してくれました。工程順にお伝えしますね!
まずは洗い場。精米した米を洗ってから水に浸します。吸水量調節のため浸漬時間が重要。
ざるにあげた米は、この甑(こしき)と呼ばれる巨大な蒸し器に入れられ、1時間ほど蒸される。
その後、蒸された米を麻布の上に広げて、微生物が活動しやすい温度までさまします。
続いて麹室。ここで清酒用の黄麹菌という粉状の胞子を米にふりかけ、混ぜる作業をもって麹がつくられます。
蒸米を混ぜる作業を続け、麹菌の活動を助けながら麹が完成。次に酒母室で酵母をつくる。
寺田本家では現在多くの蔵がやめてしまった「生酛(きもと)造り」で酒母をつくっています。これは人工的に乳酸を添加せず、蔵に棲みつく微生物が自然に酒母をつくるというもの。この半切り桶に蒸米と麹と水を入れて、櫂棒ですりつぶす山卸(やまおろし)という作業を繰り返しおこなう。それを酒母タンクに移して、温度管理しながら酵母を育てていく。
1か月ほどかけてできあがった酒母にさらに麹、蒸米、水を加えて、20日間以上のタンクでの管理を経て醪(もろみ)が完成する。
最後に、仕込みを終えた醪が圧搾され原酒に。
寺田本家の自然酒
近江で創業した寺田本家は、江戸時代に神崎町に移り340年以上も酒造りをしてきました。「自然の原点に戻って酒造りをしたい」という願いのもと、無農薬、無添加、全量を生酛(きもと)造りで「五人娘」や「香取」などの自然酒を造っています。麹菌までも、稲穂につく稲麹から自家培養した自前のもので、手間を惜しまず昔ながらの生きた酒が多くのファンを魅了しています。
寺田本家が自然酒づくりにシフトしたのは先代から。経営破綻の危機と23代目当主自らの病気をきっかけに人の役に立つお酒、百薬の長を追求して現在のかたちになったそうです。見えない微生物の世界に敬意を払って自然と調和した酒造りは、「うまい」とか「まずい」とかそういうのを超えて、菌の黒子に徹する姿勢に感銘を受けた。
雑菌を排除し、さらに排除しながら、純粋な菌を培養した酒は、命のかけらもない「酒のようなもの」ができただけの話で、本当の酒ではない。微生物たちが喜んで働いてくれるからこそ、本物の酒ができるのだ。
―23代目当主 寺田啓佐さんの著書「発酵道」より
寺田本家
所在地:千葉県香取郡神崎町神崎本宿1964 地図をみる
電話番号:0478-72-2221
Webサイト:https://www.teradahonke.co.jp/