現在の日本におけるクラフトビールブームは、アメリカのムーブメント抜きには語れないだろう。Brewers Association により公開された2018年のレポートでは、アメリカには7400もの醸造所があり、この数字は実に、日本の約20倍にも上る。すごい数ですね。

そんなアメリカのビール文化を支えているのは、なんといってもホームブルワー(自家醸造家)の存在だ。これだけアメリカのブルワリーが急激に増えたのも、最初は趣味として始めたブルワーが開業するケースが多い。彼らもまた熱心な飲み手であり、知識を備えた成熟した飲み手がいることによって、質の高いクラフトビールを生み出す土壌をつくっている。
自家醸造が禁止されている日本では、当然のごとく酒づくりを教える学校や書籍が少ない。少ないと言ったのは、これからご紹介する厳選された本たちなのですが、原則的に法律の範囲内(1%未満)でお楽しみくださいと前置きされて出版されているものだ。ちなみに、世界各国周りを見渡してもこのような法律があるのは日本だけ。
流行とともに選択肢が増えて楽しいですが、せっかくなら自分で選びたいですよね。自ら良いものを選択する目(舌?)を養いましょう!少々前置きが長くなりましたが、それではご紹介していきます。
世界で愛されるビールづくりの入門書
自分でビールを造る本―The Bible of Homebrewing
対象:初級者、中級者、上級者
1984年に発行されて以来、世界中で読まれている自家醸造本の決定版です。これまでになんと90万部以上も販売されていて、日本では2001年に和訳版が発行されたベストセラー。著者は American Homebrewers Association の創設者で、長年 Brewers Association の会長を務めたチャーリー・パパジアン。情報の網羅性が高くレシピ集も豊富なため、まずはこれを持っておけば間違いなし!初心者から実践者へ幅広く、自信を持ってオススメできる1冊です。ただ文字情報が多いため、多少読むのに根気が必要かもしれません。ちなみに私は英語学習のためにオリジナルの洋書も買いました笑
写真が豊富で初心者にもわかりやすい
自分でつくる最高のビール
対象:初級者
こちらは日本で、手作りビールキット、自家製ビール、ワインの道具と材料を販売している「アドバンストブルーイング」が手がけた入門書です。フルカラーでしっかり写真を使って解説してくれてるので、視覚的にとてもわかりやすいです。道具も特別なものを用意しないで、どこの家庭でもありそうなものをチョイスしてくれてるのも、必要最小限でまずは試してみたいという人には嬉しい。モルトエキスで仕込む(初心者に難易度の高い工程を省く)レシピが中心なので、1冊目に手に取る本として初級者に最適な本でしょう。ほかにもシードルの本「リンゴのお酒 シードルをつくる」も良著です。
ホップやハーブなど原材料の栽培にも挑戦
手づくりビール読本
対象:初級者、中級者
この本は、ホップやハーブなど原材料の栽培寄りの話も盛り込まれているのが特徴です。ビールは基本的に麦芽、ホップ、酵母、水でできています。原材料のホップであったり副原料の植物や果物などは、ビールのキャラクターを印象づけるものとして、無限の楽しさを教えてくれるでしょう。自分のつくったものを入れられるのは自家製の醍醐味ですので、原材料にまで目が向いたら是非手にとってほしいです!この本は、どぶろくや焼酎、ワインなど自家醸造文化が根付かない日本において、積極的に関連本を出版されている、個人的に激アツな「農山漁村文化協会」から出ています。私自身もこの本を参考にベランダでホップを栽培してみました。
ホームブルーイング本のニュースタンダード
世界に通用するビールのつくりかた大事典
対象:中級者、上級者
2017年発行の本で大事典という名の通り、何度も読み返せる濃い内容になっています。トラブルシュートの章があったり、酵母の培養方法までステップアップを望む人向けの情報が多く掲載されていて、日本語で読める文献としては「自分でビールを造る本」にも替わるぐらい、分厚く網羅されています。大型本で少々読みにくいのが難点ですが、もっと腕を磨きたい人にはピッタリですよ!ちなみに著者のジェームズ・モートンは現役のお医者さん。
プロのビールレシピを参考にしてみよう
Mikkeller’s Book of Beer
対象:上級者
最後に、言わずと知れたデンマークのファントムブルワリー、ミッケラーのビール醸造解説本です。こちらもひと通りの醸造に関する内容が掲載されているのですが、なんといってもこの本の良さはレシピです。ミッケラーといえば、実験的で斬新な、攻めたクラフト感あふれるビールが魅力ですが、そんなオリジナルレシピが25種類も公開されています。太っ腹!すべて実際に販売されているビールのレシピなので、あれやこれやと分析しながら飲むのも楽しいですね。こちらは英語の本ですのでご注意ください。
おまけ:動画学習サービスを利用する
有料のオンラインコースを利用すれば、手軽に体系的な学習が可能です。私の知る限り、日本語のこのような講座はまだないため、英語で受講する必要がありますが、やはり動画は力強い!ということで、オススメの講座をご紹介しておきます。本と比べても決して高い買い物ではないと思いますので、ご興味がありましたらこちらも合わせてどうぞ〜。
ちなみに Youtube でも「Homebrewing」と検索すれば、自家醸造動画がたくさん転がってますので探してみてくださいね。道具など皆さんいろいろ工夫されてます。DIY精神スゴイ。
いつの日か、日本でも自家醸造が解禁されることを願って。