先日の記事「ギネスもクラフトビールだと思うんです。」で、&Crafts ではクラフトを「個性」と捉えていると紹介しました。&Crafts は手仕事の美しい飲み物を祝福するメディアであり、何より私は個性のあるモノや人が好きなんです。
クラフトビールを通して、大量生産的ではない手仕事の魅力に気づきました。それはどういうことかというと、良いものをしっかり自分自身で見極め選択していく必要があると感じたんです。
役に立たないものや、美しいとは思わないものを家に置いてはならない
―ウィリアム・モリス
私が生まれたのは1985年。昔と比べれば欲しいものは簡単に手に入るし、ものがないというのを経験してない世代です。資本主義が物欲を満たしてくれたけど、はたしてそれは幸せだったのでしょうか。
家庭でも学校でも右にならえと育てられ、みんなの考えに同調し、同じものを食べて、同じものを身に着ける。私は幼いころ自分には個性がないとコンプレックスに思っていたことがあるほどです。
もしかしたらそれは今も変わらず思っているのかもしれない。他の人と違うことをやらなければと脅迫観念のようにつきまとっていました。でも人間根っこから変わることはそう容易いことではないので、いつも中間をとってきたように思います。
本サイトはそんな自分への反抗心が動力源になっています。そしてサイトタイトルのとおり、&Crafts はアーツ・アンド・クラフツ運動の影響を受けています。
アーツ・アンド・クラフツ運動
アーツ・アンド・クラフツ運動とは、1880年代に始まった手工芸復興運動です。その主導者であったウィリアム・モリスの名前を聞けばピンと来る方も多いのではないでしょうか。
当時、産業革命は粗悪な大量生産品をもたらしていました。そんな機械生産に対して、画家や建築家、デザイナーを中心に手づくりの復興を掲げ、生活と芸術の距離を近くすることを目指した運動です。
関連の著書を何冊か読んでいるが、なかでも運動の変遷を記した「アーツ・アンド・クラフツ運動」の次の言葉が印象的。
人びとは手ばかりでなく、頭と心も機械的になっている。
長らくITの世界に勤めてきた自分は特にその影響を受けやすいのかもしれません。みなさんも現代人は効率を追求しすぎていると思うことはないでしょうか。
とはいえ、手仕事を猛烈に信奉し、機械を徹底的に批判するつもりはない。企業努力によって生み出された安価で高品質な恩恵もたくさん受けているのだから。
ただ、情報操作や食品偽装など度を超えた商業主義があまりにも横行してないでしょうか。そんな見せかけの幸せになんの価値があるのか。さらに同著の言葉を引用すると、
作り手の喜びも製品の個性も皆無だった。
手工芸ギルド学校を設立したチャールズ・ロバート・アシュビーは商業主義の産物をこう評しました。喜びとともに、個性を追求する。これこそ、現代にも通ずる作り手の理想の姿ではないでしょうか。